2017年4月16日日曜日

「共効」を素材として「私効」に変えられるか?

生活民の差汎化対応で、2つめに求められる行動は、「共効」を素材として差延化し、「私効」に変えることです。

企業側の差し出す新商品には、常に機能、記号、体感、遊戯、真摯などで、新しいネウチ(共効)が付加されています。

しかし、生活民自身にとっては、それらが自らの生活に本当にネウチ(私効)があるか否か、必ずしも決まっているわけではありません。

とすれば、さまざまな新共効を私効に変えられるか否か、を冷静に見分けたうえで、可能性があるとすれば、その部分を自ら変換して「私効」化することが必要です。

先に述べた「差延化」という行動を、生活民の側から積極的に実施していくということです。


具体的に言えば、私仕様、参加、編集、変換、手作りなどの差延化行動を、新たな共効に対して、次のように実施していくのです。


①「私仕様」・・・供給側の差し出した新オーダーシステムを利用して、どこまで自分自身の求める「私効」が達成できるか、を見極める。

②「参加」・・・供給側の提供する新商品を、7~8割程度の素材をみなして、どこまで自分自身の求める「私効」が達成できるか、を考える。 

③「編集」・・・供給側の差し出す、新しい商品を素材や部品とみなして、自らの“自主編集権”がどこまで満足できるか否かを判断する。

④「変換」・・・供給側の差し出す、新たなネウチ(共効)をあくまでも一つの素材とみなして、どこまで自らの「私効」に変えられるか、を検討する。

⑤「手作り」・・・供給側が新たに素材として提供するネウチ(共効)を利用しつつ、自らの頭と手を使って、どこまで自分のめざす「私効」を作り上げられるのか、を改めて考える。

以上のように、生活民の差汎化対応では、新たに提供されたネウチを冷静に取捨選択したうえで、自らの生活に取り入れていくという、高度な知恵が求められます。 

2017年4月3日月曜日

新商品の“共効”をしなやかにチェックする!

生活民の差汎化対応で、最初に求められる行動は、「企業の提案する新“共効”を、そのまま受け入れず、個効、私効としてチェックする」ことです。

新共効には、新機能、新記号、新体感、新遊戯、新真摯などがありますが、これらが生活民にとって、本当にネウチのあるものかどうか、を慎重に検討することが必要です。

企業側では、技術革新の成果やマーケティングリサーチの結果などに基づいて、新たに開発した新商品を開発し、次々に消費市場へ投入してきます。

だが、それらはあくまでも供給側からのネウチ提案にすぎませんから、個々の生活民にとっては、そのまま受け入れるべき個効、あるいは自ら利用できる私効ではありません

それゆえ、生活民には新商品の差し出す新たなネウチ、つまり新共効が果たして自らの個効や私効へ転換できるか否か、厳しく検討することが求められます。




新機能については、既存機能との違いを細かくチェックし、自らの生活構築にどこまで役立つかを見定めなければなりません。

新記号については、自らの差異的ネウチ観と見合っているか否か、を冷静に検討することが必要です。

新体感については、既存の体感に新たな体験を付け加えることが本当に必要なのかどうか、を見分けることが重要です。

新遊戯新真摯などでは、生活民が本当に求めているものであるか、を改めて検討しなければなりません。

生活民のしなやかなネブミ行動によって、新商品が生活素場に根付くか否か、それが初めて決まってくるのです。

2017年3月24日金曜日

差汎化対応の3つの行動

企業側のマーケティング戦略でいえば、新たなネウチ(共効)を持った新商品を、消費市場に向けて積極的に提案していくこと、それが「差汎化」戦略です、

新たなネウチ(共効)としては、新機能、新記号、新体感、新遊戯、新真摯、さらにはこれらをさまざまに組み合わせたネウチを持った新商品や新サービスが代表的です。

(下図では
社会界の9院をベースにして、代表的な5共効をあげています。)


昨今の消費不況の中で、供給者である企業側は、新しいなネウチ(共効)を持った用具(道具)や報具(情報具)などの開発に熱心であり、さまざまな新商品が毎日のように発売されています。

とりわけ新機能商品については、近年、AIやロボットなどの新情報技術を応用して開発された電子機器や乗用車など、続々と新機能商品が売り出されています。

このように続々と提案される新共効に対して、生活民はどのように対応していけばいいのでしょうか。

基本的な行動は次の3つだと思います。



 ①企業の提案する共効をそのまま受け入れず、個効、私効としてチェックする。
 ②共効を素材として差延化して、私効化する。
 ③差延化で生み出した私効を企業側へ提案し、共効化していく。


3つの対応行動によって、消費市場を「消費財購入」から「生活素材調達」の場へと転換させていくこと、これこそが生活民としての差汎化対応だと思います。

2017年3月14日火曜日

差汎化戦略に対応する!

生活民マーケティングの立場から、差延化戦略に続いて、その対極にある差汎化戦略への対応策を考えてみましょう。

差汎化戦略とは何なのか、企業側からのそれについては、すでに「
差汎化とは何か? 」(2015年9月18日)で述べましたように、社会、価値、同調などを求める世欲に応えて、社会的なネウチ(価値=共効)や共同体的な需要を創りだす手法です。

経済学では、いわゆる「ネウチ(有用性)を「効用」という言葉で表していますが、生活民マーケティングでは、この「効用」を次の
3つの次元に分けて考えていきます。

 共効・・・社会集団が共通して認める有用性=共通効用
 個効・・・個人が共効に基づいて認める有用性=個別効用
 私効・・・私人が純私的に認める有用性=私的効用

このように分けると、
すでに述べたように、市場社会で行われている、さまざまな需給行為には、次のような矛盾が指摘できます。

①供給者である企業は、市場の存在を前提にして、商品のネウチを作り出し、かつ供給しています。このネウチとは、市場を支える多くの需要者が共通して求める「個効」を集約したものですから、まさに「共効」です。つまり、商品のネウチとは、多くの需要者が共通して商品に求める有用性、いわば有用性の“最大共通素”とでもいうべきものです。

②通常、需要者である個人は、それらの「共効」に従って商品を購入し、そのとおりに使用して、個人的な効用である「個効」を実現しています。

③しかし、個性や独創を重んじる生活民の場合は、純私的、主観的な「私効」を目的にしますから、既存の商品を購入した場合でも、それに手を加えたり、別の有用性に変換するなど、自分なりの手法で使用して「私効」を満足させています(差延化対応)。この場合、一つの商品の有用性は、市場での最大共通素を前提にしながらも、その中から個人的、主観的に選ばれる有用性、いわば“最小共通素”となります。

このようなズレがあるため、一つの商品の持つ「共効」と「私効」の間には微妙なズレが生まれてきます。

企業の側では、できるだけ多くの顧客の求めに共通する「個効」を抽出して、商品の「共効」を作り出そうとします。これに対し、個性的な生活民の側ではできるだけ自分だけの有用性を求めて、商品の「私効」を購入しようとします。

両者は当然重なっていますが、最大共通素と最小共通素がぴったり一致するのはごく稀なことです。そこで、企業は少数需要者の「私効」の一部を切り捨てることで大量生産を可能にし、また生活民は自分なりの「私効」をある程度犠牲にすることでその生活行動を実現していきます。

企業の側に立てば、この落差を埋めることが差汎化戦略であり、次のような方向が求められています。

第1に、生活民自身が試みる用途転用や用途変換に常に注意を払って、既存商品のネウチを再点検することが必要です。

第2に、社会変化や生活変動に対応して、既存商品のネウチを一旦解体し、そのうえで変化に見合うように再構築していくことが必要です。

第3にはより積極的に、今後の日本が向う人口減少社会の望ましいと思う方向を、商品やサービスの新たなネウチとして提案していくことです。

供給者の行うこのような差汎化戦略に対して、生活民一人ひとりはどのように対応していけばいいのでしょうか。

2017年3月6日月曜日

「USマーケティング」、改め「生活民(SS)マーケティング」

2016年8月18日に、このブログで「USマーケティング」を宣言して以来、フォロワーや友人の皆様から、さまざまなご意見やご批判をいただきました。とりわけUS」という名称には反対が多かったように思います。

なるほど、と感じていましたが、ここに来て、やはり修正すべきだ、と思うようになりました。その理由は次の通りです。

①「US」という名称はUser Sideを略したものですが、これがUnited States を想起させるのでは、とのご批判がありました。それでもいいのでは、と思っていましたが、ここにきて、United States of America の混迷ぶりを見ると、US という言葉のイメージは、確かにダウンしているように思えてきました。

②Userを強調する言葉でしたが、このUserとは消費市場を前提にした、単なる需要者(consumer あるいは customer)をいうのではなく、むしろ市場そのものを超えた生活主体を表しています。そうであれば、本来の趣旨を活かして、「生活民」をもっと強調すべきだと思うようになりました。

……ということで、「USマーケティング」を改め、新たに「生活民マーケティング」に変えたいと思います。




英訳では、とりあえず「Self-helper Side Marketing」とでも名付けます。

もともと「生活者」という言葉自体も英訳が困難で、「consumer」とか「prosumer」などと訳されてきました。


しかし、「生活民」の意味するところは「自給自立人」ですから、直訳すれば「Self-helper」ということになります。

そこで、「生活民マーケティング」は「Self-helper Side Marketing」、略称「SS Marketing」ということにしたいと思います。

2017年2月25日土曜日

〝差延化〟で消費市場を脱構築する!

これまで〝差延化〟行動の代表的な事例を幾つか眺めてきましたが、改めて整理してみると、生活民が消費市場へ対応していく時に留意すべき、基本的な要件が幾つか見えてきます。


①「自給自足」実現のため「他給自足」を活用する。
生活民の生活の基本である「自給自足」を実現していくには、自然界はもとより市場界まで、外部社会に存在する、あらゆる生活素材効素:効用の素)を柔軟に利用する「他給自足」能力が求められます。

②コト次元で差延化力を高める。
独創的な思考家が標準語の単語の意味を私的な意味に変えて豊かに使いこなす(
パロール2)ように、自然界の「効素」や市場界の「共効」などを素材にして、自らの「私効」を作り上げていく、多面的な応用力を高めなければなりません。

③モノ次元で差延化力を高める。
コト次元での差延化力(パロール2)を実際に具現していくためには、モノそのものの選択力はもとより、直接それらに手を加えて「効素」や「共効」を「私効」に変換していく、モノへの差延化力が求められます。

④コスト次元で差延化力を高める。
自給自足であれば、生活民は己の力だけでモノやサービスを獲得できますが、市場社会の中では「効素」や「共効」を購入したうえで、「私効」化しなければなりませんから、市場価格そのものもまた差延化し、独自のコスト体系を創り上げていく態度が必要になります。

⑤モノ・コト・コストの差延化で消費市場をデコンストラクト(déconstruct:解体・再構築)する。
コト、モノ、コスト次元での差延化を実現することで、生活民は市場から押し付けられる商品やサービスのネウチを換骨奪胎し、その積み上げによって販売装置である「消費市場」の意味や機能さえも、生活素材提供装置としての「生活素場」へと再構築していかなければなりません。

以上のように、生活民の差延化行動には、既成の社会的装置として確立されている消費市場の機能変換が期待されていますが、さらにはその前提である市場社会そのものに対しても、修正の可能性を保持していると考えるべきでしょう。

2017年2月21日火曜日

「手作り」・・・生活民マーケティングの基本!

5つめの「手作り」は、「参加」や「変換」をさらに押し進め、生活民が生活財を”自分”の手で作る」行動です。

究極的には「自給自足」をめざすものですが、私たちが生きている、現在の市場社会ではほとんど不可能に近い行動です。

自分で水田へ行って田植えをし、収穫した籾を脱穀・精米してご飯を炊く、という単純な行為でさえ、今では容易なことではありません。スーパーでお米を買ってきて、炊飯器で手ずから炊き上げるのが精一杯の「手作り」です。

それゆえ、今時の「手作り」とは、購入してきた素材に何らかの形で自らの手を加え、最終的な生活財に作り上げる、という程度です。


言い換えれば、2~3割の素材に7~8割の手作りで目的のモノを作りだす、ということになるでしょう。

こうした視点から生活民の行動を見なおしてみると、衣食住はもとより、真面目(学習・儀礼など)や虚構(遊び・休養など)に到るまで、さまざまな先例が見つかります。



食生活分野ではもともと炊事や調理などでユーザーの手が入る比率が高かったためか、一旦は進んだ既製品化に対して、本来の自給行動が復活しつつあります。例えば、手作りのパン、味噌、豆腐、燻製、ビール、ワイン、日本酒、焙煎コーヒー、ハーブ、ヨーグルトなどです。

衣生活分野でも、自作ファッション、手作りアクセサリーから手作り化粧品、手作り手芸まで、自給的行動がすでに広がっています。

住生活分野では、セルフビルド住宅、手作り家具、手作りガーデニング、手作り工具など、いわゆるDIY行動が伸びつつあります。

真面目分野でも、手作り結婚式、手作り葬儀、手作り自費出版などで、手作りが進んでいます。手作り結婚式とは、ホテルや業者のお仕着せを嫌って新郎新婦が自ら演出する結婚式や披露宴であり、若いカップルの間で次第に伸びてきました。

虚構分野では、手作り海外旅行、デジタルクリエイター、手作りゲームなども急速に広がっています。

以上のように、生活財の購入が一般化している市場社会の中でも、「手作り」行動はなおも継続しているばかりか、デジタル化の進む中で少しずつ増殖しています。

とすれば、生活民に求められる「手作り」行動への対応力とは、次のように整理できるでしょう。

①消費市場から提供される商品やサービスの共効や個効にとらわれることなく、自らのアイデアと能力で自分だけの用途や私効を実現していく、積極的な姿勢が求められます。

②「手作り」の本質は、既存市場で通用している価値や共効にとらわれることなく、真に自らの望むモノやサービスを実現していこうとする「コト」能力ですから、日ごろから市場からの提供物を相対化する態度が求められます。

③コト次元の「手作り」目標を実現するためには、既存のモノやサービスを材料にして、自らの目標を実現していく「手作り力」が強く要求されます。

要するに、生活民の「手作り」力とは、自給自足」力と言い換えることができます。

かつて
「生活者」という言葉を初めて提唱した大熊信行は、生活の基本が「自己生産であることを自覚して」、「営利主義的戦略の対象としての、消費者であることをみずから最低限にとどめよう」とする人々だ、と述べていますが、この「自己生産」の基本こそ「手作り」である、といえるでしょう。