2015年11月16日月曜日

真実願望がなぜ高まるのか?

差真化は生活者の真実願望に応える戦略です.

真実願望は、今後の社会でますます高まっていくと思われます。なぜなら、現代社会と同じように、人口が減少し続けた時代には、真実願望が広がっていたという歴があるからです。

一つは新たな道徳感の出現。例えば人口が減り続けた江戸時代中期には、停滞する
人口容量のもとで、膨れ上がった自意識を調整するため、さまざまなしくみが生まれています。

例えば、新たな道徳学として生まれた石門心学。1729年(享保14)、京都の商家に奉公しつつ、儒教を学んだ石田梅岩は、町人の日常生活を基礎にしたうえで、神道、儒教、仏教、老荘思想なども取り入れ、庶民向けの倫理学を生み出し、門弟の養成に努めています。

あるいはゴミ戦争の終焉。江戸前期には頻発していた、町内のゴミを夜間に隣町へ放棄し、翌日には隣町が逆襲するというゴミ戦争も、享保期以降になると、幕府公認のごみ捨て請負人組合が収集し、燃料芥、肥料芥、金物芥に分けて湯屋、農家、鍛冶屋などは売却して、再資源化と費用低減の両面を図という、見事なルールができあがってきます。

こうした作法やマナーの拡大は、同じように人口が減少していた中世後期のヨーロッパにも見られます。この時代には、父親が子どもに公私の生活心得を説く「ユルバンの訓戒」(13世紀)や「食卓の心得」(13~15世紀)といったマナー書が広く普及しています。

もう一つは向学志向の上昇。江戸中期には、武士階級を対象にした藩校はもとより、町人や百姓の子弟を対象にした寺子屋郷学も増加し、全国的に識字率が急上昇しています。

これに連動して簡易な刷物技術が拡大し、学問、思想、道徳に関わる「書物」が大量に出版され、新たな学問も進展しています。

享保期に解禁された西洋本草学や蘭学は次第に発展して、田沼時代になると、『解体新書』『蘭学事始、『蘭学揩梯』『ハルマ和解』などが出版され、さらに寛政期以降は医学系、物理・化学系、天文暦学系、世界地理学系、西洋事情系などに分かれて急速に広がっています。

このように、人口減少期は作法や儀礼、勉学や鍛錬が重視される真実の時代になります。


すでに現代日本でも、エスカレーターの片側乗りトイレやキャッシュディスペンサーの一列待ち、禁煙区域に拡大など、新たな作法やマナーが生まれていますが、これらが浸透していけば、従来の社会ルールに代わる、新たな「公共性」として世の中に定着していくでしょう。

一方、少産・長寿化の進行に伴って、各種の「脳トレ」四国八十八カ所巡礼など、新たな勉学やトレーニングも流行しはじめていますが、こうした動きはやがて公共的な教育システムの改革にまで波及していくでしょう。

今後、人口減少が進むにつれて、世の中にはゆとりが生まれてきますから、新しい作法や儀礼がさらに広がり、学問や鍛錬をめざす気風もいっそう重視されるようになります。これこそ、今後、真実願望が拡大する、社会的な背景といえるでしょう。 

0 件のコメント:

コメントを投稿